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だから、信じてるんだよ。ヨルは言う。
「キミを、信じてるんだ。キミの言葉を。だから私は、キミの信じる可能性をウソにしたくない」
━━ハチには、分かっていた。声音の真剣さも、身体を支える両腕の力強さも、なに一つとして偽りが無いことを。
ただ、真っ直ぐな言葉。差し向けられる実直な想念。ハチにはそれを、疑うことは出来ない。
理屈じゃなかった。あの時、あのどん底、ぽつりと一言投げられたことば。それで全てが始まって、そして終わった。
一緒に来るかと、言ってくれた。
これじゃあ、まるで再現だ。
だから最後に、ハチは聞いた。殆ど惰性で、ちいさく細く。
「━━どうして、そんなに」
「うん? う~~ん…………ごめんね、正直に言うけど、可哀想だなって思ったんだ」
ほら? ウソは付けないし?
それだけ聞ければ、十分ではある。ハチは、自分を包む両手をそっとほどく。
お互いに、身体一つ分空けた距離が出来上がった。そこから視線を上に移すと、元から見ていた空の位置に、ヨルの微笑が浮かんでる。
星が隠れ、辺りが一層暗くなった所為か、その笑い顔にはありありとした自信を感じた。何をそんなに、とハチは思ったけれど、理由はちゃんと分かってる。
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