第3章

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「…………そうかい」 なるほど、そう来るのか。星純は少しだけ、沈鬱とした面持ちのまま両目を細めた。 あるいは、達観とした風情で。これがどういう種類の感情であるか、星純にも分かっていない。 こちらに来てから約二週間、ずっと魔法には触れてきた。調理場の火力調整から、建築・運搬の大仕事まで。 『ソドム』では、当たり前に機械で扱われる仕事を、誰かの魔法が容易くこなす。その光景に、憧れが無かったと言えば嘘になる。 それが、ただの幻想になった。自分ではどうにもならない位相、努力や才能の問題ですら無い。 呪いや祝福でさえ無いもの。ある種の、無関心に近い。誰が誰に対してかは明白だ。 世界が、ルールが。こうしておれを見捨てやがるのか。 「━━ま、仕様がねーか」 「へぇ?」 「使えないならそれで良いや。多くは望まん」 ほら、ラーメン三人前。星純は乱暴に器を置く。ネルの前に、もちろん具材たっぷりましましの大盛りを。
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