第3章

14/58
前へ
/614ページ
次へ
「いやマジなんでやねん」 「でも、でもですよ? 期待くらいしなかったのですか、貴方は。この世界の有り方、その権能について」 魔法について、と。リリーがそう告げて、眉根を潜めた。明らかに、不満げに。 思えば当たり前なのかも知れない。彼等、彼女等は魔法の力を信じ、それが自分の存在証明に一役買っていると信じている。 魔法が強大であるからだ。才能の長短や、扱いの巧みさ━━それ自体は付加価値でしかないけれど、魔法が大枠の規準としてここに在るということは指し示されている。 〈PhaZ 〉の反応は世界の理であり、それを援用することをヒトは許されている。つまりそれは、世界に干渉することを許されている、ということだ。 感情が昂るのも無理はない。年頃の十代、というお題目を差し引いても、だ。そして自分は、ああ確かに、その通り。 正直、ワクワクしたよ。だから星純は、困ったように笑う。 「期待はずれなんて良くある話だ、気にするな」 「でも、ですね……」 その表情が皮肉に見えたのか、リリーは心配そうに小首を傾げる。いや、そうじゃないと、星純は片手を上げて言葉を制した。 「知り合いの大酒飲みな物書きが言ってたんだけどさ、全ての物事が期待通りに進む事なんてあり得ないんだと。世の中ってのは不条理だからな。努力したって、報われない事は沢山ある」
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加