第3章

15/58
前へ
/614ページ
次へ
 「…………」 「ーーでもな、おれのオヤジは言うんだ。『目的を果たせず、失敗した努力でも、無駄であることは決してない』……ハハ、カッコいいだろ?」 要は、受け売りということ。しかして、こうした言葉の群れに救われた事は何度もあった。 産みの親の顔も知らない、命の価値など理解できない。そんなドブ底のクソッタレを、最初に拾い上げたあの人を、おれは忘れない。これは、その記憶の一部。 敢えて語りはしないけど。育ての養父について、教える機会はまだ要らない。 リリーはその様子に、呆れたような、諦めたような顔色を浮かべる。何を言っても無駄なのかなと、心のうちが透けて見えた。 ━━そうして、また何時もの微笑が戻ってくる。おまけみたいに突くため息は、開き直りの合図か何かか。 「言うことも為すことも本当に意味不明ですね、貴方は。偉い偉い♪」 「……なんでアンタはここに来てイビり入ってんだよ」 「いやですね、これも努力の賜物、報われない努力ですよ」 「五秒でひとの台詞をパロってんじゃねーよ!」
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加