第3章

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ーードガン。  屋台の備え付けテーブルが叩き割れる音。そして暖簾の落ちる乾いた音。 「お邪魔するゼェ?」 そして顔を出す人物もまた、星純の見覚えがある輩だ。もう随分と懐かしく感じる。 オリーブドラブのモヒカン。きつく鋭くどぎつい目付きの、あのワニ面。 「居た居た……! 探したぜこの問題児がァ。よくもぶっ飛ばしてくれたな、エェ?」 ギザギザの前歯だか犬歯だかを覗かせ、リリーの後ろから凶悪そうに表情を歪める。けれどそれより、星純には目を離せないことが。 「テメェのおかげで自慢の歯が何本か折れちまったじゃねぇか……まあすぐに治して貰ったがよ、無傷ってワケにはいかねぇ」 テーブルを叩き割る、鈍い色の斧槍。ネルとリリーの間に割って入る形で刺さっているが、怪我人は見当たらない。 「まさか上級生に手を上げるとはなァ、俺センパイだぜ? 不意を打たれてノされちまったが、正面からやったらお前なんぞ虫だぞ、虫」 分かってんのか、なんてお決まりに因縁を付けてくるのは正直どうでも良い。問題は、借り物で商売道具で、しかも愛着溢れる古ぼけた屋台セットをがっつり傷物にされたこと。
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