第3章

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グレイのセミロングが揺らいだ。がっちりと固められたオクトパスホールドを瞬時に解いて、刹那に召喚した鉄棒をしっかりと掌握し、バックスイング含め振り切るまでの全動作が1秒もない。 むしろ台詞のほうが時間つかってるんじゃないかしら。星純の妙な確信と心配をよそに、ワニ面は後方へ吹っ飛ぶ。 色々と尖った顔付きがひしゃげ、名状しがたい可哀想なフォルムと成り果てた顔と付属の肉体は、すぐ傍に控えていた人垣がしっかり受け止めた。ワニ面の仲間か、制服姿の誰かも居れば、そうじゃない何者かも居る。 着の身着のまま、というか。タンクトップなりTシャツなり、非制服という意味では新調したワイシャツ姿の星純もそこに入るけど、あちらは真っ向からこちらを敵視して睨んでいる。 しかも当方、目当てが一人増えているようだし。 「なんだお前らァ! そこの爬虫類モドキの仲間か! つまりセクハラ仲間だなこのヤロウ!!」 語弊がある。えらく横暴な難癖と感じたか、参集した人垣━━ざっと3、40人くらいか━━のあちこちから声が上がる。 何してくれてんだテメェ! いくらなんでもイキナリ過ぎるわ! 馬鹿なの!? あとセクハラじゃねぇし!! 因縁つけんなや!! 絶賛手前らで因縁垂れ流しの連中が、なにか戯れ言をぶちあげている。そもそも先に手を出して、ひとの屋台を傷物に仕立て上げたのはそこのオリーブモヒカンだと言うのに。
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