第3章

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あとで抗議申し立ててやる。出るとこ出てやる。場所は分からないが、何処かには出てやろう。 そして、ふと。人垣の一部を星純が見遣る。何か、手のひらサイズの長細い物体を掲げる人物を。 というか、人物の持っているモノが気になる。そのフォルムと、色合い。いや、ちょっと待て。 「大体、そんな卑劣な真似なんかしねぇよ俺達はよ!! せいぜいヒトの上履き盗むくらいだ舐めんなや!!」 「…………」 気づけば、星純は駆け出していた。通り自体はそう広くも無く、やたら人の群れが出来ていてスペースは限られるけども。 それでも、星純は駆け出した━━いや、助走をつけた。あとはもう、肉体の制動に任せた慣性を利用して。 跳躍し。 物理的エネルギーを集中させ。 「なに勝手に人のモノをぱちってんだこのクソゲス変態野郎ぇあああああ!!!」 星純の絶叫を前に、悲鳴すら上がらなかった。心の叫びが真に迫ったようで、気圧されたようだ。 なんて訳もなく。正確には、ものの見事なフライング・ニーが的確に盗人へ炸裂したもので、その辺りの人混みを幾人か削ってひどい状態に仕上げたから。 戦慄している、という意味に於いては同じである。残った群衆が、揃いも揃って不気味なものを見る様な目付きなのは、ちょっと心にくるものがあるけど。 それはさておき。 「……弁償しろ」
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