第3章

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「便宜上は“彼女”ですけど、将来的には“彼”になるかもしれないので良いんじゃないですか? ハーフエルフの性別は、時間が経たないと決定されませんので」 「それも問題だけどよ」 ひっくり返ったジロリアンを拾い上げる。無惨に台無しとなった麺に具材やらを尻目に、屋台の厨房に立つリリーを見遣った。 さっきと立ち位置が逆だと、うすぼんやり考える。お手伝いしますとか言って逆転を許したけど、厨房の火力調整魔法は自前でどうにか出来ないので、正直助かる。 リリーもそれを察しているみたいで、寸胴鍋の収まる釜に仕込んである、基底部の赤い石ころを見分していた。結晶石と呼ばれる、一種の装置だ。 その前で、左手をかざしながら空中に円陣を描き出す。屋台で出掛ける前、パン屋の店長も似たような事をやっていた。浮かぶ幾何模様に文字の羅列を、タッチパネルみたいに弄くって。 「本来なら〈錬成士(アルケー)〉の仕事なんだろ、それ。アンタは出来んの?」 「多少、仕事に差し障りない程度には調節できますよ。なんだ~~セージュンくんもちゃんと勉強してるんじゃないですか~~今度こそ本当に偉い偉い♪」
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