第3章

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特に私たちは、そうしなければならない理由があるのだし。 ━━とはいえ。 「…………見付からない…………なぁ」 ため息のような台詞。実際、クレアもすこし疲れた様子で俯いてしまう。 人影はゼロ。だから注意を促した回数もゼロ。しかも路地はここだけでなく、ここが最初というわけでもない。 地域ごとに分かれているゴロツキスポットを、あの喧騒に包まれた屋台から近い順に回っている。早足で効率良く巡回はしているけど、既にこちらでスポットは5個目。 それなのに、収穫は無し。ヒトっ子一人いないとはこのことである。どうなっているのやら。 クレアは小首を傾げる。後ろで結わえたポニーテールも、素直に従って小さく揺れた。 こんな裏空間にも、定休があるのだろうか。ちょっと荒唐無稽過ぎる考えが脳裏をよぎる。 そんな、瞬間。 「…………?」 クレアの歩調が不意に止まった。とある、アパートメントの真正面。 路地の裏側とはいえ、それなりに開けた場所も大きな物件も有る。そのほとんどがボロボロの旧式建築だったり、寂れた整地漏れの空白地だったりするけれど。
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