第3章

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それなりに面積を取った物件なのだし、入り口は他にも在るだろうに。つまりここは、人が住んでいないという意味での廃墟ではないわけだ。少なくとも、出入りはある。 クレアは吹きさらしになったフロアを見渡すと、上階に続く階段を見つけた。廊下と部屋の隔たり、区分けされたスペースの壁も所々壊れ無くなっている状態で、それは比較的綺麗な有り様を保っている。 壁は壊しても、階段までは無くしたくないと、そういうことなのだろうか。属性はともかく、移動補助の魔法が使えれば不自由も無いだろうに。 けれど、一先ずはクレアもそれに倣ってみる。素直に階段を上がり、二階。 一通り見て回って、何もないことを確認する。精々、何人かのグループが寄り合って暮らしていた、という様子を感じ取れるだけ。 次に三階。 こちらも同様に、。 一階と違って、比較的壁も柱も健在だけれど、ボロボロの廃墟然としたイメージを覆すには至らない。焚き火の残りや、散乱したゴミ、身体に纏わりつく据えた臭いもその一因。 しかもこれだけ探して、あの右手の主も見えない。どころか、魔法が使われた形跡も争いが在った様子もないと来た。
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