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「━━〈torch liter(トーチライター)〉」
ちいさな魔法陣が発ち現れ、手のひら大の明かりが優しく灯る。火属性に連なる治癒魔法だ。父が『グレート・ブリテン』でも屈指の〈治療士〉なればこそ、応急処置程度の回復なら問題なくこなせる。
けれどそれは、状況に深く依存するものでもある。このまま何もなければ、彼女を助けるのに大した支障は無い。
ただ、クレアには分かっている。彼女の右手はどう見ても健在だ。
「おやおやぁ?」
案の定、というべきか。背後から掛けられた声にクレアの背中が総毛立つ。けれどそれは、危機感からくる反応ではない。
油断は無かったのに後ろを取られ、それに気が付かなかった事にはもちろん、驚いてはいる。
けれど何より、こうして身体に纏わりつくような、粘着性の声色に嫌悪を覚えた。そして、多分それが悪かったのだ。
「こんな所でなにを……」
「━━『バンシィ』!」
クレアは振り向き様、刹那で呼び出した大弓から矢を放つ。声の反響、気配、直感も含め相手の位置を推し量る要素は十分だった。
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