第3章

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ただ、妙な感覚がある。まるで捉え所がないような、虚ろな感覚。 放たれた矢が空を切り、特性として仕込んだ魔法が矢じりを分裂させる。即席の矢雨が、部屋の入り口に佇む人影を襲った。 人影━━線が細く、服装もぼろぼろな様に見えた━━は素直に数の暴力を受け入れ、廊下の壁に打ち付けられる。殺傷性は抑えた連撃だが、こうも直撃は想定していない。 「……?」 クレアは怪訝な表情を浮かべ、打ち倒した人物に近付く。男だった気がするけど、瞬間の事で確証は無いし、隅々まで見る余裕は無かった。 まだまだ甘いな。心中でひとりごち、男の全像を捉えられる位置まで近付いて。 「……え?」 クレアは絶句した。 腹が綺麗に開かれていた。内蔵が見当たら無い。頬のこけた男の顔は、泣きながら笑っている。 そしてなにより、右手が無い。 「こんな所でぇ」 またしても、背後に気配。粘着質の音程。しかし、どうしてそんな物を感じるのか理解できない。 この部屋の入り口も、今自分が立っている間口の他にはない。だから自分の後ろに、誰かがいるなんてあり得ない。 一人を除けば。
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