第3章

39/58
前へ
/614ページ
次へ
くそったれと、呟いたところで聞こえもしない。もろに爆風をもらった油断を、悔やむように顔をしかめ、クレアは顔を上げる。 ぼとり。 何かが上から落ちてくる。音ではなく、振動でそれを感じる。 しかもひとつだけではない。 ぼとり、ぼとり、ぼとり。まとまった数で雨みたいに落ちてくる。鈍く、湿った、それなりに重いもの。 この建物は五階建てで、今いる場所は四階。上階がもうひとつある計算になるけど、ここにくるまで人影の欠片さえ見当たらなかった。 生活の形跡はあるのに。ならば彼等は、一体どこに消えたというのか。 「はい、捕まエたァ♪」 「ッ!」 クレアの身体が重くなる。鈍い衝撃と圧力に、余韻の消えかけた痛みが戻ってきた。 そのお陰か、意識もより鮮明に回復する。ようやく機能しだした視覚が、部屋の現状を正確に捉えた。 打ち砕かれた壁、四散した窓、そこかしこに燻る火。歪な灯りに照らされた、血塗れの人々。 そのうちの一人が、自分に覆い被さっている。けれど重みは少ない。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加