第3章

42/58
前へ
/614ページ
次へ
周りに立ち尽くす死人たちは、その様にこそ狂喜した。高く枯れた笑い声を上げながら、その中の誰かが言った。 「でわ、わ、わ。美味ソウなオ嬢サン」 「大変申シ訳ないデスススが 」 「イタダキマス!!」 「……っ!」 「なにうちの妹に手をあげてんだテメェら!!!」 豪快な声音、怒声。そして優雅に舞って踊る青い髪の毛。 クレアは悟る。互いに不可分な、双子の意味を悟る。 「姉…………さん?」 壁を砕き、火炎を割いて現れ、振り回す得物で人影を薙ぐ。その動線に触れた身体が、まるで気勢にあおられる様に吹き飛んだ。 そうして、豪快に登場したグレイの━━姉の表情は、ひどく凄惨なものだった。自分より幾らか尖ったまなじりが、凄烈に歪む。 そのまま心配そうな眼差しをこちらに向けるのは、なんとも器用な手際だ。そういう、冷静な思考が出来ている自分はいま、いくらも安心しているのだとクレアは後れ馳せに気が付く。 「ごめんクレア! さっさと追うべきだった!」
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加