第3章

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グレイが矯めつ眇めつにらみ返すと、喋る死体は一ヶ所に身体を集め始める。というよりも、ひどく圧迫されながら一点に集約されていく。 ごき、ばきり━━そんなおぞましい音が響いて、死体の姿は大きな塊に変わる。 肉や骨、ヒトの身体で継ぎ接ぎされた何か。 「つまるところ……あなた方は美味しく死ぬと言うことですよ」 手足が無くなり、顔らしい顔も無くなり、突起した肉片と巨大な右腕が大体となった身体で、縦に大きく避けた口で発する明瞭な声色は、あまり奇っ怪に過ぎる。クレアは再び、静かに恐怖した。 けれど、グレイはそれらを正面から見据えて、苛立ち加減に構えて見せる。「あのさァ……」と、声にも怒りが滲んでいた。 「てめぇ、状況が良く分かってないらしいな」 「はい?」 「ウチの妹を傷付けて、悦に入って美味しく頂くだのメインディッシュだのとふざけやがって……だが決まりだからな。許す気は無いが、降参する機会はくれてやる」 大人しく投降しろ、グレイは侮蔑するように睨み付けながら、死体だったモノに嘯く。ほとんど人らしい面影は見えないし、本当の意味で話が通じるか分からないけれど、反応はある。 身体の右半分に、まとめて揃えた眼球の羅列がある。塊はそれらを訝しげに、うっすらと見定めるような目付きに変化させた。
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