第3章

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後に残るものは、せいぜいが残骸のようなものだ。吹き飛んだ手足とか、細かいパーツ。 「相変わらず……すごいね……」 「ふん。どんなもんだい」 クレアの謂いに、グレイは小さく鼻を鳴らして答えた。敵を排除して、ついでに広がりかけた炎も鎮火できたのに、その表情に晴れた所はない。 自前の得物が生み出す特性━━振動を物体に直接叩き込み、水分との共振で相手を粉砕するそれを、水の魔法で以て増幅し倍加し破裂させる。ぷかぷかと浮かぶ水の球体は、そのままひとつの“棺桶”になる、というわけだ。 概ねの生き物が、肉体の大半を水で形作っている以上、生命に対してかなり凶悪な魔法であることに違いはない。だからグレイにとっても、これは簡単に使用する類いの魔法ではない。 それを躊躇なく使うというのがどういう事態か。クレアは良く理解している。 「……ごめん……姉さん……ヘマしちゃって」 「まっっっっったくだよクレア!! 昼飯時に! ケンカ終わりに! ケンカチャンピオンの権利を行使(カツアゲ)してたってのにこれだしッ! 適当に追っかけて見つけたら死にそうになってるしなァもう!! 〈棺桶殺し〉だって、爆発四散のエグいもんだから気分良くないんだぜ!?」 「うん………………ごめんね……」
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