第3章

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自分でも、驚く程気が立っているらしい。食事の邪魔をされた上に、こちらの“分身”も破壊されたのだから、苛立っているのかも。 『……なるほど、理解した』 一通りの状況を検証し終えたようで、曹長━━劉小鳴は口を開く。グレゴールの報告から、まだ30秒と経っていない。 ひとえに、それは生体デバイスの演算加速と、位相差バッファリングによる並列化処理のおかげ。映像、音声、記述もろもろの媒体を複合的に観照することで可能になる、情報の高速伝達。 それらの咀嚼には個人差があるけれど、おしなべて化け物揃いの同僚達であるから、的外れな意見はまずあり得ない。こちらの一考も終わらぬまま応対されるのは少し困るが、グレゴールは何事もなく通りの隅に引っ込んで上官の言を待つ。 『まずだが、我々の目的が察知された可能性は?』 「匂わせはしましたが、全容を掴むのは無理ですね。情報が少なすぎる」 『貴様の正体が露見した可能性は?』
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