第3章

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〈Call:passive//いやぁ、お二人さん。横合いから失礼しますよ?〉 ひとつ、声の主が増える。互いの掛け合いとは別ものの調子と声音で、こちらの会話に割って入る若い声。 『……アドルフか。何の用だ』 〈Contents:log//久世隊長からの現状に対する報告と、それに伴う戦略プランの更新を〉 だから喧嘩は止めてくださいね、なんて返して。間に割って出現したこの声は、ただの電子音声とは別の出力法で知覚される。 意識下に、意味を直接落とし込むように設計されたアルゴリズムで話しかけ、情報伝達のロスを無くす。互いの誤解や誤謬を無くす為の試験的な措置だが、概ねテストとしては順調に効果を発揮している。 事実、こちらの喧嘩━━のような会話の形だと思っている━━は打ち止められた。言われた通りに。 流石は、最新鋭の高機能AIだ。グレゴールは気前よく眉根を上げる。 「それで、アドルフ。隊長はなんと?」 〈Request:active//浸透作戦を次段階に移行。治安擾乱による戦力把握を一時中断し、陽動と後方連絡線の破壊準備の開始。詳細は今ダンプしたんで〉 『…………確認した。連絡線の破壊は私がやろう。陽動はグレゴールに任す』
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