第3章

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『今しがた伝達された戦術プロセスを一時延期、およびそれに伴い、戦略プランを今一度更新する。詳細は追って連絡されたし、以上だ』 『何があったのですか?』 間髪を入れず劉が問う。役職も何も名乗らず、声色だけで判断を迫るのは、この通信が緊急性の高い非秘匿回線だからだ。 傍受の可能性は無いにしても、日頃の習性は抜けられない。だからなのか、隊長も端的に、間髪を入れずに答える。 『“フラグメント”からの定期連絡が途絶えた、とのことだ』 いつもの様に端的で、明瞭な答えだけの返答。途端に通信は断ち切れて、唐突に無言の空間が生まれてしまう。 いつも通り、といった具合に。けれどそうした会話の空白は、お互いに事の異様さを把握しているから生まれたものだ。 『その性質上、“フラグメント”が定期連絡を絶えるのはあり得ない筈だが』
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