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彼は目の前に居て、居たはずなのに、いつの間にか、それこそ煙のように消えてしまった。だから最後の姿も言葉も、なにも覚えていない。
ただ、一言だけ分かる言葉がある。何もかもががらりと変わった、あの日の朝に言っていた。あの人の言葉がひとつきり。
「━━ゴローおじちゃんはカッコよかったです……にーちゃんが言ってました。本当に、すごくカッコよかった、って」
「…………ふふ。そうね、それならきっと、彼も報われるよ」
メイは言って、優しく笑みを返した。ハチは堪えるように口を真一文字に結ぶ。
━━どうして。
━━どうして、だれもいなくなるの?
ハチがそう考えた時、後ろの平積みした商品が盛大に崩れる。反射で振り返るハチは必然、乱雑な店内を更に掻き乱したヨルの姿を見る。
「うわ! これっ、まじ!? あの有名な土管工おじさん!? オリジナルの8ビット!?!?」
とかいう意味不明な台詞も吐いて、やたらとハイテンションで。ハチは呆れたように、一つに結んだ唇をへの字に曲げた。
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