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「ちょっとヨル! 店の中だぞ、何してんだよ!」
「くっ……抑えられない童心の疼き…………」
「それがある頃に生まれてないでしょーが!! 童心もくそもあるか!」
「も~~ロマンが無いなぁ。そんなだからやたら犬っぽいとか言われるんだよ八次郎くん」
「ハチだよっ! いやハチなのかそれ? いや違うよなそれ!!」
まったく。まったく、である。
こうして下手に、この女は心を乱しやがる。こっちの気持ちなんてお構いなしに。
本当に、どうしようもない。ハチは苦々しくヨルを睨み付けると、まずは店から摘まみ出そうと歩を進める。
すると、だ。
「おやおや、何かと思えば……騒がしい上に陳列まで壊されとるじゃないかね」
いつの間にやら、出入り口の正面に誰かいる。店内の埃で出来た煙幕が視界を遮るけれど、声がそこから聞こえているのは分かる。
ハチと同じような身長で、しかし嗄れた声調と老練な身体つきは似ても似つかない。それに何より、頭に大きなお団子が2つ、存在を主張しながら左右に居座っている。
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