第4章

9/85
前へ
/614ページ
次へ
店主、楊麗々が両手を後ろに回して立っている。その刻まれた幾つもの皺の奥、店内を一瞥する視角は持ち店の状態を把握すると、いたく鋭く光った。 「こりゃあれだね。損害賠償のあれだね」 「はい?」 「しめて70万クレジットかね」 「え、ちょ、ま」 「名誉毀損込みだからねぇ」 「いや、それはちょっと違うんじゃ「なんなら100万クレジットでもいいんだぜ!!」だからヨルは黙ってろって!!」 さすがに堪忍袋の緒も緩みっぱなしである。そして度重なるストレスに耐えきれるほど、ハチの許容量も深くない。 そろそろ最終解決策としてのグーが出てもいい頃だ。ハチは決意し、自分の右手を強く握る。 「まぁ待ちなさいな。それはお前さんの価値ではないさね」 ハチの前に老婆が立ち、いつの間にやら握りこぶしに手を置く。ハチは一瞬、バツの悪そうな顔を浮かべると、大きくため息をついた。 拳もほどく。老婆は顔の皺でニヤリと表情を作ると、「いい子だねぇ」と嘯いて店の奥に足を向ける。その背中越し。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加