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店主、楊麗々が両手を後ろに回して立っている。その刻まれた幾つもの皺の奥、店内を一瞥する視角は持ち店の状態を把握すると、いたく鋭く光った。
「こりゃあれだね。損害賠償のあれだね」
「はい?」
「しめて70万クレジットかね」
「え、ちょ、ま」
「名誉毀損込みだからねぇ」
「いや、それはちょっと違うんじゃ「なんなら100万クレジットでもいいんだぜ!!」だからヨルは黙ってろって!!」
さすがに堪忍袋の緒も緩みっぱなしである。そして度重なるストレスに耐えきれるほど、ハチの許容量も深くない。
そろそろ最終解決策としてのグーが出てもいい頃だ。ハチは決意し、自分の右手を強く握る。
「まぁ待ちなさいな。それはお前さんの価値ではないさね」
ハチの前に老婆が立ち、いつの間にやら握りこぶしに手を置く。ハチは一瞬、バツの悪そうな顔を浮かべると、大きくため息をついた。
拳もほどく。老婆は顔の皺でニヤリと表情を作ると、「いい子だねぇ」と嘯いて店の奥に足を向ける。その背中越し。
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