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「あぁそうだ、ハチ坊や」
「坊やとか呼ばないでよ……」
「そうかいハチ坊や。注文の品は表にあるから取っておいで。最近は物騒だから、道中気を付けるんだよ? 追い剥ぎが出てるみたいだしね」
「追い剥ぎ?」
「それと、年寄りからひとつ忠告さね」
店主、麗々が小さく右手で指し示す。その手の平から何から、全てがしわくちゃのくせに、ぴんと張った指先まで淀みがない。
それが、自分を指していた。軽妙な雰囲気から一転、ちょっとした緊張をすら感じている。ハチは少しばかり背筋を正して、店主の言葉を待つ。
「おまえさんも若いからねぇ」
「……」
「こんな婆の忠言なぞ聞かないだろうが……」
「ッ…………!」
「おまえさん。
━━二股は良くないねぇ」
「ハチ公はお座りだにゃん!!」
唐突な衝撃と、空気が身体から抜けていく音。こひゅん、とかそういう間抜けな音調を感覚。
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