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次の瞬間はもう、身体が宙を舞っていた。目の前にある、自分で用意した椅子と体を捻って回避をかます娘さんとの合間を縫って、地面に転がされること三回転。
遂に壁へ激突し、上下逆さまで世界を見るような体勢へと相成る。いわゆる恥ずかし固め、だとか言われたかたち。
「まったく! なんでみんなして黙って出ていくのかにゃん!」
ちゃんと混ぜてよね、と。怒ってますよと自己主張のポーズを決めて、今までハチが立っていた場所に別人のシルエットが浮かぶ。
同じくらいの背丈で、しかし頭に2つの尖った耳。聞きなれた声で、馴染みの調子を自分に向けてくる。ハチは身体も心も混乱していたけれど、それが誰かはよく分かっていた。
「なん、で……ミツが……ここ、に…………」
がくりと、そんな具合でオチるハチ。当たり処が悪かったらしい。
「え? う、うそにゃん……はっちゃん……? はっちゃーーーーん!!」
絶叫と共に駆け寄るのなら、やらなきゃいいのに。と、意識が途切れる寸前に思ったことは、かわいそうだから言わないでおこう。
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