第4章

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 『も、もう良いですから……』  顔を真っ赤に、うつむき加減の自分を隠すよう、ヤヨイはスケッチブックの裏に隠れた。  『カ、カ、カノジョじゃないので良いですから……』  するとどうだ。スケッチブックの文字が勝手に消えて、別の文字が浮かび上がる。いい加減、文法的にも慣れては来たけど、やはり見慣れない異界の文字。  しかし、出力方法というか。チョークを宙に浮かべたり、水やら火やらで文章を起こしたりするのは良く見ているけど、こういうのは初めてだ。  きちんとペンで書かれているものが消えて、ひとりでに文字となるなんて。視線誘導キーとか、思考出力とかに近いものを感じる。  「嫌ですねぇレオ君~~わたしは指示語としての“彼女”と使っただけで誰それの保有を指す“カノジョ”とは違いますよぉ♪」  「絶対狙っただろ」  「はて? 何のことですか?」
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