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『お? そうか? 分かってるねぇそこのおなごや』
随分上機嫌な様子で、声を出しているのはスケブの方だ。ヤヨイは殊更顔を赤くしながら、喋る画材の裏に隠れている。
なんとも、状況がちぐはぐだ。星純はひとりだけ、怪訝な様子で辺りを見回す。
ほどほどに騒がしいテーブルなのに、あちこちの誰もが黙々として資料に没頭している。昔から、図書館だの図書室だのは絶対安静の掟があると、読書好きの婆さんから聞いていたけどここでは違うらしい。
なにせ、画用紙が綴じられた冊子自身が喋るのだから。掟を破ると即ブッチ(読書婆さん談)のペナルティがある『ソドム』の図書館とは違って、色々と寛容らしい。もちろん、そんな高尚な空間などスラムの何処にも無かったけれど。
そしてブッチって何だ。
『ともかく、アタイがこれじゃあ仕様がないねっ、と』
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