第4章

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 リリーも不意に動きを止めて、困ったような表情を作る。「あちゃー、やっぱりですか」と、訳知り顔で呟いて。  その前にサシャを離してやれと、思わなくもない。けれど一先ず、星純は首を傾げた。  「どうしてだ? 別に、やっても問題ないんじゃねーの?」  「忘れたのか? 実技試験はクラス選抜だ。つまり新入生の各クラスによる対抗戦がその骨子になる。お互いの手の内を、そこに探りを入れるスキルも含めて対戦することになるんだ。下手に会合するのは勧められない」  「うむむ、まあ、そうですよね。ひょっとしたら、レオン君たちと当たることもあるでしょうし、そういう談合として見られても面白くないですよねぇ……何だったら今からでも、妙なものとして見られる可能性はあります」  「まぁ、色々あるからな。アンタらも、それに俺らも」  「ふむ……そういうモンかねぇ」  そのあたり、まだまだ疎くて仕様がない。いろいろと、事情が在るのだろう。力関係とか、立場とか。  面倒くさいなと、星純は思う。こと、自分を取り巻くいまの状況は、まさにそういうしがらみから出来ているのだし。  厄介なことこの上ない。それを理解した上で、星純はおもむろに手を伸ばす。  「あん?」  「ま、その内にでもまた遊ぼうぜ。結構楽しかったし」
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