第4章

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 何の気もない言葉。セットで差し出す手の平は、いわゆる握手というやつだ。親愛とか、仲直りの証とか、そうしたものを表す所作の一つ。  『ソドム』も『アルビオン』も、その辺りの意味は同じようだ。逆に言えば、無防備な身体の一部を差し出す、という意味合いが不文律で成立するほど、あちらもこちらも同じくらいには物騒らしい。  レオンもそのあたりは分かっているのか、ひどく無警戒なそれを前に、盛大に眉を潜める。とはいえ現況から、訝しむというより、ずっと呆れが勝ったような表情だけれど。    「お前さん…………何て言うか、図太いな。話聞いてたか?」  「うん、聞いてた。その上でこれだ!」  「馬鹿なのか?」  「気にすんな」  「こっちが気にしてんのは性分じゃなくて背景の方だっての。選抜のこともそうだが、俺らだってグラン家と繋がる連中に絡まれたくないんだよ」  「だから気にすんなって」  「いや気にする、わ、ば! 止めるなヤヨイ……!」  吠えながら、的確にツッコミを入れるレオン。それを取り繕おうと、隣席を実力でーー主にスケブでーー嗜めるヤヨイ。二人にとっては、なるほど、何時もの光景のようで手慣れた感がある。
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