第4章

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 こういうものは貴重だ。星純は知っている。だから一度、手の平を下げ、  「なんかさ、良いよな。そういう信頼しあってる感じって」  「はあ?」  「自分以外の誰かを大切にできるのは、良いヤツの条件だ。アンタは……いやアンタ等は、ちゃんと互いを庇ってんだなぁって思ってよ」  「は、な、は!?」  『…………!』  二人揃って、ひどく素っ頓狂な顔だ。それはそれで失礼な気もするけれど、こっちも似たような真似はしたのでお相子か。  とはいえ、直接の制裁が下るのこちらだけ、なのだが。何時ものように狙い澄まし、絶妙なタイミングで痛いところへ当ててくる。  真後ろからのチョップ。  膝が衝撃で崩折れて、首根っこをがっちりホールド。あとは悪戯がすぎて叱られている猫のように、襟を掴まれ観念のポーズ。 こうした手際の良さは、正直職人の域に達している。星純はくらくらと、視界をぼんやり歪ませながら、職人リリーの成されるままに身を任す。
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