第4章

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 なのでこのチャンスを逃さない。「キシェエエエエ!」とか叫んでいるがもう遅い。  星純はメイスの穂先を右足で押さえつけると、開いた身体で作る溜めを開放。左足が的確に、サル顔のこめかみを捉える。  吹き飛ぶ相手を見向きもせず、すかさず振り向き。ネコ耳とネコに似た顔立ちで、細剣を振りかぶる女学生がいる。  星純が気付いたことは想定外のようで、一瞬だけ怯むがそれでも突撃を敢行。  切っ先から軽く火花が散る。触れると厄介そうだ。星純は右手を差し出し、手慣れた様子で、護拳の部分から刃を止める。  「な、馬鹿な!」  「そっちが阿呆なんだよ」  もっと上手く闇討ちしろと。文句もそこそこに、星純は女学生の懐へ潜り込む。  剣を振る関係で延びきった右手を担ぎ、何時ものように身体を軸にして体を持ち上げ。勢いも加算し、そのまま一本背負い。  硬い床に、背中から落下。受け身もまともに取れなくて、肺から空気がなくなる音が聞こえる。  鍛練とか経験とか、そのあたりが色々と足りてないようだ。後ろから襲いかかればいいなんて、そんな安直なことを考えたに違いない。  星純は憐れな目付きで倒したふたりを見下ろし、次いで廊下の奥を見遣る。明かり取りの窓が規則的に並んでいて、端正な斜光が荘厳な様式を照らして。
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