第4章

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 「でもそれ、サシャちゃん的には逆みたいですよ?」  ふざけている中で、いきなり真面目になりやがる。交渉術でもなんでもなく、相手をおちょくって場を支配するやり方は、龍二郎のそれに近い。  あっちとこっちで下手に似るのもどうかと思うけど。しかしその効果は、この場において酷く有効らしく。  「だってサシャちゃん、セージュンくんに謝りた「それ以上はダメ!」むんぐ」  目の前に、突如として現れるサシャは真っ赤な顔で、必死にリリーの口元を押さえている。雷電が空を走り、辺りで弾けるスパークが星純の肩に当たる。  それくらい近い距離なのだから、リリーにも応分の被害があるかというと、そうでもない。火花は統制もなく、自由に弾けているよう見えるけれど、リリーには一欠片も当たってはいない。  気を遣ったのは確かだ。そしてこっちには気を遣っていない。これだけで単純な事実だけど、それでも謝りたいものなのか、星純は首を傾げる。  「ち、違うから!」  「…………あ、え? なにが?」  「だ、だから、その……ボクがキミを嫌ってるとか、そういう話し」  そうじゃないから。念を押すように、もう一度呟く。
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