第4章

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 やっぱり聞こえていたのかと、ぼんやり考える星純。嫌いじゃないと自己申告までして、かなり必死な様子だ。けれど、だとしたら尚のこと、可笑しな話になる。  「嫌いじゃないならなんで避けんの?」  「さ、避けてないって。ただちょっと…………その、話しかけずらかったし大変そうだから関わらないのを積極的にしてただけで……」  世間ではそれを「避ける」と言うのではなかろうか。  「世間ではそれを避けるというんですよ?」  「リリーは黙ってて!」  折角言わなかったことをずけずけ言い放つあたり、やはり流石だと思う。参考にはしないけど。  そんな星純の気も知らず、また目の前の状況もひどい。サシャの顔色は、赤面というより困惑のそれとなっている。  とりあえず行動。顔面のロックを素早く外すリリーを、再び押さえつけようと伸ばすサシャの両手。  けれどリリーの方が巧みで、サシャの攻撃をするりと掻い潜ると背中から相手の身体を羽交い締め。あえなく捕まった宇宙人みたいに、驚愕と羞恥でサシャはバタバタ暴れだす。  「ちょ、ちょっとリリー!?」  「いい加減、言いたいことは言ってあげた方が良いですよ、サシャちゃん? そうしないと、彼はともかく貴女が腐ってしまいますから」
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