第4章

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   「ッ!」  鷹揚とした諭す口調に、サシャもようやく冷静さを取り戻す。みるみる引いていく頬の赤みに、動揺の消えた焦点。  拘束を解こうと、暴れることもすぐに止めた。そして一言、ひどく神妙な顔つきで、「ごめん」と言って。  「……ご免なさい、セージュン。その…………初めの時と、森の時と、色々」  正直な言葉だ。ものすごく、真っ正面からの。それくらいは星純にも分かる。  恥やプライドから、サシャは謝ることを逃げていたわけではない。もっと純粋に、後ろめたさがあり、何より謝り方が分からなかったのかもしれない。  長いこと独りぼっちだと、そういう現象がよく起きる。特に、誰も信用しないような、出来ないような環境が、身の回りにある場合。  過去に由来する、経験上の場合だ。孤独だったのか、孤独に成ったのか、それを知るよしは無いけれど。  なので。  「そうか? 別にほら、謝られるような事をされた覚えはないぜ? おれはな。むしろこっちがゴメンだわ」  「え、えぇ?」  星純はそれっぽく肩をすくめ、真剣味に欠ける様子で答えることにした。リリーがサシャに向けるのと同じように。  悪ふざけではない。要は気楽にいきたいだけ。こうした手合いの人々が、気楽に生きて大丈夫と言いたいだけ。
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