第4章

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 さすがに不憫だと星純は思うけど、それはそれで個人の問題だから言うべきモノもない。けれど、せめてドンマイくらいは言ってやるべきか。  星純が益体もなく考える合間に、サシャの方が先に動いた。でも、ひとつだけ、そう前置いて。  「ギルバートの事は……悪く思わないであげて?」  「あん?」  「彼は…………いや。彼もやはり、いい人なんだ」  サシャはそう言って、申し訳無さそうに眉根をひそめると、すぐさま身を翻して駆け出した。すると同時に、雷光が走る。  バチバチと、火花が空間を叩く音。それはすぐに余韻となって、小さく遠く廊下に響く。  その頃にはもう、サシャの姿はなくなっていた。相も変わらず、目にも止まらないスピードで、しかし行動の目的は分かりやすい。  「わざわざ魔法使うほどバツが悪かったんかね、サシャは」  「そうでは無いでしょうけど、謝った手前もう一度きちんと仕切り直したい、という願望が在ったんでしょう。いわゆる“オトメゴコロ”と呼ばれる現象ですね♪」
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