第4章

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 結局、目的地に着くまで如何にサシャが素晴らしいのかを、滔々と説教される始末だった。時間にして、およそ20分。  付き合いきれないという考えはとっくの昔に置き去りにして、むしろよく20分も一人の誰かに対して熱弁できるものだと、軽く感心し始めた頃。  見えてきたのは、巨大な両開きの門扉だ。いつか見たときと同じように、それは不遜か、あるいは厳かな面持ちでもって鎮座している。  「ほれ、着いたぞ。いい加減お喋りはやめる時間だ」  「そんなことは無いですよ! まだまだサシャちゃんの魅力は語られていない部分がいっぱいあるんです! いいですか? そも、褐色肌の女の子というのはですね……」  これはまずい。非常に。再び20分コースのべしゃくりな予感。  しかも合わせて考えるだに、そんな事態が起きた場合誰も幸せにならないのは目に見えている。どうせ五月蝿いだやかましいだ「そうですよね!? アニキ!!」とか言われながら制裁が待ち受けているに違いない。  なので、星純は自信の先手番を作る。まぁ待て、落ち着け、という言葉よりも前に。  「…………あのな、リリー。この扉の向こうには先に集まったクラスメイト連中が居るだろ?」  「そのエロティシズムがなんとも……、と? あ、はい、そうですね?」
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