第4章

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 星純は、門扉を蹴り開けて飛び出すサシャのライダーキックを喰らいながら、そんなことを考える。あの仮面ヒーローも脱帽な、速度と角度と破壊力。  これで背後に大爆発でも起きれば完璧なのだろうけど、そこは積極的に割愛してもらおう。ここにはその手の刑事軍団も、怪人もいない。  「ふざけてないでさっさと入れよ。あとお前だけだぞ、セージュン」  理不尽である、という意味においての怪人は居るらしい。今さら、驚くようなことでもないけど。ちょっと悲しくなるだけ。  星純が身体を起こして確認してみると、リリーは既に競技場へ入っているところだ。サシャに絡みながら、イチャつく権利はわたしだけのものと言わんばかりに。  なにか、こう、身に詰まされる諸行無常を感じる。あるいは扱いの優先順位、というか。とにもかくにも取り敢えず、星純はリリーの後ろを追いかけた。
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