第4章

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 競技場ーー正確には第三競技場、というらしいーーは、以前適当に入り込んだ時と様相が違っている。床一面の土に、周りを取り囲む壁と客席は変わらないけど、広々と設えられた空間に三つばかり石の台地が出現している。  前にここで、強制的に殺されかけた時は無かったものだ。入り口の大門は、大きいとはいえこんなステージを運び込めるほど間口は広くない。  そもそも、いくら空間が巨大でも、そんな台地を三つも備えられるほど、大きくはなかった筈だが。  「まずは、安心しろと言っといてやる。ここに何度か足を運んだ生徒も居るだろうし、見覚えのある風景からちっとばかり変化があると思うが、ここはきちんと第三競技場だ」  教員ウェイド=スプリングは、そんな台地の上から声をかける。壇上からの声掛けはいかにも教師らしいイベントのひとつだけど、それが駅前のヤンキー座りになると、なんかすごい。  色んな前提条件が壊れ去る風景だ。そもそも教師に見えないから、むしろ問題はないのかもしれないけれど。  「これはまぁ、〈セント・マリア〉の特典みたいなもんだ。副校長の認可が下りれば、校内の施設を諸々いじくれるってわけ。もち、教師限定だが」
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