第1章

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いや、説明が必要とされる、その水準に至らない。だって、本当に要らないのだもの。そこらの籠を曳く馬(の様な生き物、というニュアンスを含め)よりも二回り大きな四足獣。 ていうか、サイズは違うがこれはあれだ。流石に、〈械獣〉としても見たことの無いあれ。 いわゆる、マスコットキャラというやつ。 「アンタ、これさ……」 「はい? この仔ッスカ? ムカシサラマンダーのパールちゃんっすよ。ウチの紅一点っすけど」 なるほど、それなら『サラマンダー急便』でも頷ける。だが、星純の知っているこいつの名前は、たしかメキシコサラマンダーだったはず。 メキシコが何を指すのかは分からない。人なのか物なのか、巡りめぐってもっと大きなものなのかも。けれど、コイツの名前は分かる。 通称、ウーパールーパー。 「ワンッワンッ」 日に照った柔い薄ピンクの皮膚に、発色の良い赤茶けたエラ。馬鹿に巨大な体格を、人間仕様の廊下に押し込んで窮屈だろうに、ユルい顔立ちからは何も汲み取れない。
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