第4章

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 「?」  変なレトリックだ。星純も内心で首を傾げるが、見るとどうやら、この教師の言葉を理解している生徒はほとんどいない。  それを察しているらしいウェイド教員は、ようやくヤンキー座りを解く。  「選抜に出られる人数の上限は決まっていない。だから極論、ここに居る全員で本選に出場しても問題はない。いまこの場で話し合って、それでも良い全員で出るってんなら、俺は教師としてそれを止めない」  広い競技場、いまや闘技場と読んで差し支えない空間に、決然とした声が呼ばわる。今までで一番教師らしい声音で、そこかしこによく通った。  だが、それじゃあ意味がない。教師は続ける。    「全員で仲良く出張って、全員で仲良く勝つか負けるかするのも悪くはないんだろうよ。仲良しこよしアピールしあって、人徳だ人倫だに訴えかけるのも間違いではないさ。しかしこれは“選抜”で、その為の“実技試験”だ。誰かを蹴落とす前提でこれは存在する」  教師ウェイドは一度言葉を切って、自分の生徒達を見遣る。  「ここに居る連中は、いずれこの国を背負って立つ金の卵どもだ。それは才能だけでなく、自らの決意を断行するという面も含めての評価だと、俺は思う。その、ある意味での覚悟を常に試されるのが〈セント・マリア〉という空間だ。何を言いたいか、俺の生徒どもなら分かるな?」
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