第4章

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 「……」  星純はおもむろに右手を翳して、顔面に襲い来る石柱を受け止める。けれど、それで止まるような物量じゃない。  身体ごと無理やり持っていかれて、足腰の踏ん張りが石柱のエネルギーに拮抗できたのが、もと居た位置より2メートル後方。けれど、顔には埃もついていない。  分かっていた。だから対応できた。星純は顔色ひとつ変えない。  「ーーチッ」  小さな舌打ちが聞こえて、星純はそちらに顔を向ける。今回の主犯ーーというか、これまでに至る一連の騒ぎの元凶へ向けて。  「やっぱアンタか、ギル」  「気安く……いや、気安い名前で呼ぶんじゃない。下郎が」  砂色の髪を総髪に。きつく睨みつける眼光は鋭さを増す。  ギルバート・S=グランが、得物の両刃斧を地面に突き立てて言う。この間のように気勢を吐くでもなく、しかし今度はしっかりと、殺意に近い感情を持って。  なるほど、以前とは状況が変わっている、というわけだ。いまや近場にリリーはいないし、公然と戦いの場も用意されていて。  
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