第4章

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 そして自分を抑える必要もない。星純は正直、呆れたと思ってしまう。  そんなに敵意をさらけ出せるのなら、最初から抑え込まなければいいのに。  「ーーまぁ、今のはおれが悪いにしても、そんなにおれが嫌いか? おれはお前さんに何もしてない筈だけど?」    「そちらの身に覚えは無いだろう。だが私は見過ごせない。グラン家として、アルビオンに住まう者として、お前を処断せねば気が済まない」  「……あぁ、そ。本当に、嫌われたモンだな」  星純は苦笑して、油断なく睨むギルバートに肩を竦めて見せる。好かれたり嫌われたり、こちらの自分の立ち位置ーージパングの人間には同情する。  星純は石柱から手を離すと、ギルバートに背を向けて歩き出す。ついでに、自分の進行方向を顎で指して。  「どうせならキチンと戦おうぜ?」  と、一番手近の、地面に接地したステージへ歩き出した。ウェイド教員が今まで使っていたステージ。  ひっそりとした佇まい、雰囲気。これだけ枝葉のように現れた闘技台の中で、それは随分目立たない代物としてそこに在る。  だから丁度良いし、何より飛び跳ねて移動する必要がない。星純にとって、優しい造りだ。
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