第4章

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 「ーーフン」  星純が石台の縁に手をかける。身体を持ち上げようとした瞬間、頭の上を何かが横切った。  それは目の前で着地して、スライディングをしながら慣性を殺す。と言っても、その制動距離は1メートル弱といった所だけど。  ひと一人分の慣性で言えば、大体そんなものか。星純は目の前で、斧を片手にこちらを見下す、ギルバートの表情を見遣る。  「いいだろう。今日で幕を引いてやる」  「ハッ、願ったりだ」  また随分と、上から見たような物言いだ。互いの体勢から、位置関係からそうなのだから、これも仕様がない。  星純はステージに上がり、その中央で相対する。ど真ん中を外して、正対する互いの距離は五メートル程。星純なら、三歩もあれば埋まる間合い。  だけど向こうには石柱を生やす魔法がある。どんな原理かは分からないけど、“土”属性に類する魔法なのは確かだ。そしてそれは、こちらの一歩よりも断然速い。  ーー持久戦かな……  星純は考える。月並みに過ぎて面白さの欠片もないけど、相手の手札が分からない以上、不用意な真似はするものじゃない。
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