第1章

30/91

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/614ページ
目的の人物。もとい、誘拐実行犯二人組に吐かせた、黒幕の居所を前にしては。 「オイ! リリーこの野郎ォォォォオオオゴラアアアアア!!」 開け放たれたドアの向こう、窓際に佇む影がひとつ。花に水でもやっていたのか、振り向き様の彼女は水差しを持っている。 早くからご苦労なこと。窓辺に置かれた、湿り気を帯びた花の顔が、朝日に照り輝いている。 「おやおや~~? こんな朝っぱらからデートですかぁ? 良いご身分ですねぇ~~」 演出として、ちょっとくらいは雰囲気を持たせれば良いのに。ゲスっぽい台詞と悪意のある微笑が、綺麗な日差しを背景としていて酷くミスマッチだ。 それにデートではない。 「これは証人だ。お前の悪行の証人だ」 「証人……はて、わたしには耳をやられたのを良いことに勝手に背負われて呆けている憐れなエリスちゃんしか見えませんが?」 「おだまり」 勝手を言っていやがる。それにエリスの現状は、おんぶの体勢で突っ走られると大体の子供がなる現象でしかないので、つまりは思いっきり目を回しているだけだ。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加