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あの掌を。リリーは薄く、金色が彩る大剣を、星純に差し向ける。
「ーーその為だけに呼んだのかよ?」
「何より重大な案件なので。貴方は、貴方に宿る“それ”が何なのか理解していない」
「〈PhaZ〉が反応してないとかどうとか、そういう話か?」
「それを貴方が、貴方のような規格外が抱いているというのが問題なのです」
リリーの顔から笑みは消えている。かといって、真剣な顔つきという訳でもない。
極めて平坦な、感情のフラットを描く表情。ともすれば冷酷な面差しだけれど、どうにも身が入っていない。
場違いだけれど、何かを見定めているような、観察する様な感じだ。だとすれば、それが指向するものは決まっている。
「おれが気に入らないか、おれの存在が不満か?」
「まさか。わたし個人の見解では、貴方は全く無害ですよ」
「じゃ、アンタ以外の奴等が不満なんだな」
「そういう事です。彼等は、いわば貴方の性能を確認したいのです。言いたいこと分かりますか?」
「ーーもちろん」
星純は打ち飛ばされた姿勢を正し、立ち上がる。広く楕円に型どられた地面を、吹き抜けから届く風が洗う。
天蓋で覆っている様式を除けば、全体はまるで競技場のようだ。これといった客席も無く、何かを観戦するといった体を保っていない。
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