第1章

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見て楽しむように造られてはいない。どころか、見られることを避けている節すらある。せいぜい、吹き抜けの窓辺に留まる小鳥がいる程度。 星純はそうした状況を見回して、ひとつ息をつく。左手を、リリーにまっすぐ差し向けて。 「このまま生徒を続けたいなら黙ってやられろ、と。そんな所だろ?」 「ご明察♪」 リリーが機嫌良く笑ったところで、会話も打ち止め。差し出す星純の左手から、迸るのは黄色い奔流だ。 たちまち、それは巨大な掌として現れ、星純の傍らに陣取る。伸ばした左手が拳を握ると、黄色の掌も応じて握る。 しかも時間差がまるでない。思ったと同時に動く様は見ていて爽快で、業務用の高性能マニュピレータを眺めているみたいだ。 それを今から思い切り、喧嘩の道具として取り扱う。中々に贅沢な空想を思い浮かべ、星純はぎりぎりと拳を溜めた。 黄色い焔のような腕も、同様に動く。我ながら、大砲でも装填しているような光景だ。だからそれが放たれると同時に、勝負は付くだろう。 リリーは大剣を構え直す。切っ先を定め身体を斜に、そう則られた構えが有る様子で、握る柄が顔の真横に来る。
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