第1章

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* * * 得られた速度が凄まじかった、と言えばそれまでだけれど、療術院に着くのがすこぶる速かった。異常なほど。 客車としてスタンダードな仕様、あの馬車に揺られた時間を正確に知ってはいないが、あれよりもずっと速いのは確かだ。空を飛んだからって、これほど短縮できるものか。 それこそ、徒歩から車に変わったような時間差。目眩と速度で、録すっぽまわりの景色も確認できなかった星純は、ただその事実に驚く。 療術院は既に目の前。外縁の芝生と計画された植え込み、街路樹ーー窓の外から、一週間も眺めた風景ーーを従えるように、それらの中心には一等大きな建物が見える。 大きいと言っても、あの城塞みたいなガッコウとは規模がまるで違う。建物のランクが、平均のそれより幾らか上等な洋館、そんな感じの規模だ。 「が、外観……見んの初めて…………」 「もう息も絶え絶えなんですから、感想とかは結構ですよ?」 口を開いてなきゃやってられない、という事実でもある。が、要は「外見もまるで見ることが出来なかったんだよ」という皮肉のつもり。誰の所為かは言わないけれど。
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