第1章

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脇の下からそつなく油断なく、自分の腕を滑り込ませるテクニックに、熟練のものを感じた。こういう完璧に極るホールドは逃れられないが、かといって、向こうに危害を加える腹積もりも無い様子。 かと思いきや。 「よっこらせ」 ズギャンッ、みたいな効果音と共に。星純の脳天は、舗装された石畳の地面に叩き込まれる。 まさかの予想外、いや予想されて然るべき結果が、まさかの医療従事者から突き付けられる。全くもって綺麗に繰り出される、ジャーマンスープレックス。 起きてからずっと、まるで意味不明な展開が過ぎる。しかも綺麗に決まったスープレックスに、軽く意識が飛びそうだ。 「ほい、治療完了」 「…………はい?」 さらに不可解な台詞で、親方はホールドを解いた。身体の叩き付けられた衝撃は凄まじく、ちょっとしたクレーターみたいに石畳を破壊しているのに、何故だかどこも痛くない。 どころか、身体が軽くなったような気すらしてくる。星純は杭のように打ち込まれた姿勢を正し、怪訝そうにあちこちを触って確認する。 「なんか、痛くないよ?」 「そりゃそうよ、治療だからな」 「今のが!? 今のどこに治療的要素があったよ!?」 「“叩き出した”んだよ、オッサンの治癒魔法でな」
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