第1章

5/91

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/614ページ
最初はひとりで、次第にみんなで。家は崩れてしまったけれど、幸いなことに怪我の軽い子供たちは多かった。 もちろん、重傷な子もいる。ミツなんかは柱に身体が挟まった拍子に、右手をひどく折ってしまって大変だった。いまもまだ、ぐるぐる巻きの片手を首で吊っている。 それなのに、ほんの一時間前まで一緒に捜してくれていた。一番ひどいのが右手、というだけで、ミツの身体が本当にひどい有り様だったことを、ハチは知っている。 当分は静かに寝てることと、いつも面倒を見てくれているお医者さんーーヤブ医者と呼ばれているーーに言われていたのに。それから10日は経つけれど、子供服の隙間からは雑な包帯が見えている。 いまも、その切れ端がふらふら風にもみくちゃにされているかと思うと、ハチの心はチクリと痛んだ。にーちゃんなら、こんなことは許さない。 それが必死に、兄ちゃんの「パーツ」を見付ける為ならば、尚更。 「此処にいたのかい、お二人さん」 今度はまた、別の声。ハチは顔をようやく上げた。 もちろん、その声は聞いた事がある。知らない誰かではないから、確認のために振り返るわけじゃない。 誰かが分かっているから、ハチはしっかりと睨み付ける。丁度ミツも振り返って、難儀そうに緩やかな傾斜を昇る人影を見付けた。
/614ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加