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昨日の“裏入学式”だって、一部始終が彼女の指示みたいなものだ。“委員長”とは、それだけの権力を備えるに足る役職なのだと、星純にはとても思えない。
「何者、ですか? ふむ、難しいですね」
リリーは、その表情を変えはしない。威張った胸を元に戻し、思案顔で中空を見つめる横顔が、十代の女の子らしく整っているにしても意味が違う。
整えている、意識しながら。殆ど、女生徒の顔をしたままの鉄面皮だ。まるで中身が伺えない。
「とりあえず、保留でお願いします」
悪びれるつもりもなく、リリーは堂々と白を切る。どころか丁寧に、悪戯っぽく片目まで閉じて。
「言えないってことか? それとも言いたくない?」
「教えても意味がないと、そういう意味です」
星純への答えにと、リリーは優しげな笑顔を寄越す。なかなか辛辣な謂いのくせに、いやだからこそ、星純にはリリーの笑顔が鋭く尖ったものに感じた。
十代の女の子にあるまじき、まるで切っ先の様。ここでもやはり、笑顔の奥にあるものが、星純には見えない。
いまは、これ以上は無理か。
「さて!」
そんな、星純の認識を知ってか知らずか、リリーはわざとらしく両手を打つ。パチンと、雰囲気を切り替える合図のように。本当にそうだとしても、星純に異論は無い。
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