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「あ? 婆さんさすがに魔法のイロハくらいは知ってるだろ? なんでも、そういう権能を持つ人間だけ瞬間移動できる回廊があるらしい。これだって魔法だろ?」
「え、えぇ、そうですじゃの。いやいや、少々うっかりしていて、その原理を理解しておらんかったですじゃ。失礼をば」
「??」
なんというか、不可解というか不可思議というか。老婆の応対に、星純は少しの違和感を覚える。
魔法は普遍的な技術だと思っていたのに、それとも教育に地域差があるのか。人生経験豊富だけど、読み書きはからっきしの老体が平屋の真隣をたむろしてた時期もある。
あるいは、魔法を知らない事情があるか。その辺りの文明差までは、推して知るべしというもの。
「ではでは、儂の疑問も解決したところでお暇を。とても良い、タメになる時間をどうもありがとうですじゃ」
老婆はいきなりそう言って、一礼。杖を付いて歩き回る身体で、深々とお辞儀をする。
流れ的に、彼女は会話を締めに掛かっているらしい。まだ会って数分で、しかも頼みを断った相手に感謝まで示すとは、器がデカいことこの上ない。
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